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「奈良と日本建築-文学のまなざし」講演会レポート

1/26、名古屋工業大学名誉教授の若山滋先生をお招きして、「奈良と日本建築-文学のまなざし」というテーマで建築士会生駒支部主催で講演会をさせて頂きました。
企画や進行、初めての経験ばかりでしたが、先輩方々にいろいろアドバイスを頂いて、いい講演会になったかと思います。お忙しい中、お寒い中、来ていただいた方々には御礼申し上げます。

さて、建築士会の「士会奈良」に来月載るであろうレポートをこれまた、任せていただきぎりぎり書き終えました。拙い文章ですが、読んでいただけると幸いです。

生駒支部若山滋さん講演会

●生駒支部主催講演会
若山滋氏講演会「奈良と日本建築」-文学のまなざし-
開催日時:平成25年1月26日
開催場所:生駒セイセイビル

奈良は昨今、遷都1300年や古事記編纂1300年を迎えた節目であります。歴史的文化が注目される中、「万葉集」「古事記」の文学的観点からみた「建築」をテーマに日本建築の空間とその風土を紐解きながらお話頂き、奈良の文化的背景の理解と、そしてこれからの奈良の建築についての在り方について考えていくような講演を企画しました。
若山滋先生は名古屋工業大学で「文学の中に文化的意味を探していきたい。」と万葉集から研究を始められます。
「万葉集」と「古事記」は文化の記録としてつくられ、初めての文字文化が形成されます。当時、シルクロードを通じてガンダーラやギリシャのオリエンタル文化が伝来し、奈良の都は急速に都市化していきます。ひとつの例として正倉院もペルシア様式の積み上げる建築としてあります。
「万葉集」に出てくるワードを数値化していくとおもしろい結果が出たそうです。ひとつは「家」と「やど」というワードが多い点。もうひとつは「寺」というワードが少ないという点です。「家」というワードは詠み人が誰かを想い遠い奈良の都のことを読んでいる歌が多いとのことです。つまり、奈良から主役となり詠んでいる歌は以外に少ないということ、「家=不在の空間(詠み人や相手)」と
考えることができます。「寺」というワードが少ないという点は、都市化や仏教に対して不安や反感があり、背を向けられていたと捉えることができます。離れた場所から都市化する奈良の都をうらやみ、そして故郷を思い出す歌が多いのが万葉集の特徴とのことです。そこには「都市化のルサンチマン」が働いていると仰っています。ルサンチマンとは怨念・反力・反動といった意味を持ちます。ニーチェの本にもこの言葉が利用され、ネガティブな意味合いで使われていますが、若山先生はポジティブな肯定的な意味合いで使われています。
世界的な建築に目を向けると、石造建築に対する、ルサンチマンとして、モダニズム建築が位置づけられ、コルビジェのサヴォア邸などが挙げられます。日本のルサンチマンを感じる建築としては、ブルーノタウトに高く評価された桂離宮や伊勢神宮が挙げられ、これらは仏教建築(法隆寺など)、国際的建築に対するルサンチマンと考えられます。このような文化的節目にあたる文学を研究していくと、その時の文化に対し反力的な動き、ルサンチマンが読み取れるとのことです。
京都や禅の文化にも触れながら、近代の文学から建築を読み取るお話に進展します。四迷、鴎外、漱石、荷風らのヨーロッパに渡った人の文学についても興味深いお話がありました。例えば夏目漱石の作品では当時の建築と作品に出てくる女性像を重ねて読むと文化背景が読み取れます。「坊ちゃん」では西欧的な女性像で美女・豪華さがあるようなイメージです。辰野金吾の建築が世に出た時代です。後期の作品になると主人公の設定から茫然とした不安、アールヌーヴォー、ゼツェッションからバウハウスなどのモダニズムに対する不安として捉えることができます。
現代文学では村上春樹さんの作品から「今まであった地縁の共同体から意識への共同体」といったことを考えることができるのではないかというお話がありました。電子情報社会、ヴァーチャル世界が顕在化し浸透しています。その時代を経て、現在「生きる力=野生」を求め、風土や植物、動物などリアルなものに意識が向いているというお話で締めくくっていただきました。
質疑応答では「奈良」と「京都」の違いについても触れていただきました。奈良のオリエンタル文化、無文字文化、漢字文化に対して京都の日本文化、文字文化、かな文字文化と二つの文化の大きな転換を知ることができました。

講演会を通して建築文化と文学の密接な関係性を知るとともに、社会背景と建築文化の動きについて感じることができました。長い歴史の流れとそしてこれからの時代の新しく創造していくものが切り離されるものではなく一連の中で生まれていくと良い風土、町並みが生まれていくのではないかと感じました。
ご講演いただいた若山滋先生、ご参加いただいた方々に、御礼申し上げます。

・・・といった内容です。2時間で建築文化をフラッシュバックできるような講演会でした。
若山先生の「 建築再読の旅―人はなぜ建築するのか 」と「 風土から文学への空間―若山滋・建築作品と文化論 」が個人的には建築文化を勉強できる、おすすめしたい本です。

 

-設計工房フウカ-

奈良県生駒市を拠点に主に住宅設計を中心に活動する一級建築設計事務所。

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